私が愛してやまない恋愛小説があります。
それがトルストイ作「アンナ・カレーニナ」
アンナの、自分は上流階級の貴婦人なのだ。
というプライドや振る舞いも憧れますが、
窮屈に感じている自身の結婚生活、
一児の母である自分、妻である自分など
素顔とは少し離れた「別の顔」を持たなければならない。
その重圧とまではいかないけれど、足枷がついた状態で
若くて今が花ざかりの姪が眩しく感じられるのも共感できる。
若さが眩しく感じていたタイミングでの
将来有望な恋人との出会い。
アンナのしてしまった事は
許される行いではないけれど、
それでも彼女の幸せを願ってしまう。
そして、アンナと対になる主人公リョーヴィン。
彼は彼でとても一途な青年。
素朴で一見地味だけれど誠実で優しい。
彼も報われてほしいと終始思っていました。
自分の気持ちに正直で
少々強引でも行動し続けて駆け落ちまでしたアンナ。
勇気を出して行動したにも関わらず、
あまりにも障害が大きくて一度諦めてしまうリョーヴィン。
相反する2人の性質は
私たち1人の人間の中に存在する
矛盾した感情なのかなと思います。
現れた壁に人は立ち向かったり諦めたり。
障害を超えていく勇気は出ないけど
自分を止めることもできない。
事あるごとに湧き立つ人の感情が
鮮明に描かれているから
共感できる。好きになれるのだと思う。
秋も深まった肌寒い夜に
ぴったりの人間讃歌。