人にとって何が大切なのか、原点に戻った作品。
オルコットの「若草物語」。
1860年頃のアメリカが舞台。
父親は戦地、母親は働きに出ていて
プレゼントのないクリスマスを姉妹たちが
ぼやいているところから物語は始まる。
姉妹たちが愚痴を言う中、
三女のベスは自分たちには父親もいて母親もいて
姉妹たちもいると言う。
そして自分たちのために頑張ってくれている母親に
クリスマスプレゼントを贈ろうと提案する。
私はこのベスがとても好き。
人見知りだけど、誰よりも自分を犠牲に出来て
自分の持っている幸せに気づくことが出来る。
貧しくて近隣との支え合いを余儀なくされる世の中では
あったのだろうけれど彼女のような自己犠牲は
簡単には出来ないことだと思う。
また戦争中、家族を亡くした家庭もあったことだろう。
みんなが不安で貧しい上にいつ家族と
別れなければならないかという状況を一番しっかり
理解していたのもベスなのかなと思う。
理解していたからこそ、父も母も家族もいる
そんな状況が何よりも幸せなことなのだと
思えたんだろう。
クリスマスプレゼントがなくても家族がいれくれたら。
そんな彼女の願いも込められた冒頭の発言なのかと思う。
作中にベスは病気にかかってしまうが
その時に姉妹たちは心配したり看病したりするのだが
姉妹以外にもたくさんの友人が彼女をお見舞いにくる。
内気な少女だったとはいえ、人に与えることができた
ベスのことがなんだかんだみんな好きなんだと思う。
そして自分でも知らないうちに与えるだけでなく
他人からも愛情をもらっていた。
豊かになった今の時代、より一層ベスの魅力が必要なものだと思う。
苦しい時代には幸せとか生きることというのが限られた形で
存在してみんなが一斉にそこを目指す執着に近かったと思う。
でも今は幸せの形も多様化していてある程度選択できる自由がある。
だからこそ、人と比べるのではなく自分の持っているものに
目を向けることが大事になってくるんだろうな。