芸術と謎解きの要素を掛け合わせたような作風で
最近好きになった原田マハさん。
暗幕のゲルニカは戦争そのものと戦った芸術家パブロ・ピカソと
1人のピカソ研修者の日本人女性の物語。
「ゲルニカ」という名前がスペインの都市の名前だということを
こちらの作品を読んで初めて知った。
それまでは中学の頃美術の時間で模写したなくらいの印象だった。
なのでどんな感じの絵か、また作者は誰かというのは知っていたが
それ以上でも以下でもなかった。
でも実はゲルニカという町がスペイン内戦の時に
ナチスから空襲を受けそれに憤りを感じた
ピカソが反戦の意味を込めて描いた大きな絵。
舞台は第二次世界大戦の時のパリと
同時多発テロの時のアメリカ。
この二つの物語が同時に進行していく。
パリのアトリエにいたピカソの元に
ゲルニカが空襲を受けたと知らせが入り
激しい怒りの念で描き上げた。
そしてパリ万国博覧会で展示され
多くの人の目に触れられ物議を醸した。
不安定な時代、作品が傷つけられたりしないよう
ピカソとその愛人ドラ・マール、資産家のパルド・イグナシオが
必死で守り、長い間アメリカのMoMAという美術館に保管されていた。
戦争に反対するため、芸術を武器に戦争と戦ったピカソの叫びを
70年80年で忘れてしまい、アメリカはテロを受けてアフガニスタンを攻撃
そしてイラクを次の攻撃の対象にしていた。
この時記者会見が行われた国際安全保障理事会のロビーに
飾られていたゲルニカのタペストリーに暗幕がかけられていた。
これからアメリカがやろうとしている事はゲルニカで起きた惨劇を
繰り返してしまうと予想されて隠されたのか。
繰り返される争いに反発するためMoMAで働く
ピカソ研究者の八神洋子もまた戦争と戦った。
空爆を仕掛けたら、標的にされた町はどんな様子になるのか。
市民はどんな目に遭うのか。
多くの人に届けようとしたピカソや瑤子の姿に
小説ではなく全てがノンフィクションのように感じた。
どんな経緯で描かれた作品か
どんな人たちが何を思って守ってきたか。
とてもリアルに語られている。
絵の「ゲルニカ」も「暗幕のゲルニカ」も
現代にとっても未来にとっても重要なメッセージを
発信し続ける作品だろう。
また池上彰さんの解説も合わせて読むのがおすすめ。
「空爆」と「空襲」の違いについて書かれているところは
襟を正すような気持ちになった。
本書を通して「空爆」の様子の絵だと知った上で
改めてゲルニカを見てみるとまた印象が違ってくるし
この部分がああだったのかこうだったのかと細かくみることができる。