面白さ★★★★⭐︎
好き★★★★⭐︎
おすすめ★★★★⭐︎
世に中にいる全ての男の子の憧れと好き!という気持ちを
たっぷり詰め込んだような作品。
おばさんの家に弟と一緒に住んでいるトムは
落ち着きがなくイタズラ好きで
周りの大人を困らせ怒らせる事が多々ある。
問題児といえばそうなのかもしれないが
まあ、少年にはよくある性質なのかなと思う。
普段は怒られてばかりだけれど実はみんなから
しっかり愛されている。
飾らなくて自分に正直で、本当は素直な子だから
おばさんをはじめ周りの大人は憎めないんだと思う。
冒険が好きで、他人から見ればガラクタのような
ビー玉、ガラスの破片、何も開けられない鍵などが
大事な宝物で、歯が抜けたら英雄になれる。
トムと同じ年頃の女の子には全く理解出来ないであろう世界が
繰り広げられているのも女系家族で育った私からは新鮮で面白いものだった。
自分に男の子がいたらこんな感じなのかなと想像しては
可愛いなとにやけたり、ちょっと勘弁してほしいな眉をひそめたり。
実は読むまでトムという人が溢れる冒険心に駆られて
生まれ育った故郷を飛び出して海を渡り歩く
という内容を想像していた。
実際は、トム・ソーヤー少年が地元の村で暮らしながら
その年頃の男の子にありがちな憂鬱だったり、夢だったり
好きなことで日常を満たしていく物語だった。
それと同時に村で起こった事件を目撃してしまったり
空想で宝探しをしていたら本当のお宝を発見したりと、
少年の理想も盛り込まれている。
作中トムは友人のハックルベリーとジョーを誘って
海賊ごっこをするが、このごっこ遊びをみんな本気でやる。
彼らにしてみれば、ごっこではなく本気で海賊になった気でいた。
地元の村から見える島に筏でわたり一週間ほど暮らす。
その際にしっかりとした「誓い」を立てる。
この「本気でごっこ遊び」がなんとも少年らしいなと感じる。
同じように空想好きで、何かになった「つもり」で遊んでいる
小公女のセーラだったり赤毛のアンのアンも
割と本気でごっこ遊びを楽しむが、彼女たちはどこか
しっかり現実を分かっているような気がする。
現実の世界にいながら「こうだったらいいのに」
という気持ちが強くあるが、トムは理想もあるけれど
海賊になりたいなら今すぐなろう!と決心して行動する。
友人と3人で時にホームシックになり時に嵐に腰を抜かしながら
暮らした一週間、彼らは確かに海賊として生きていた。
地元から近場に拠点を構えるのがまた子供らしくて可愛いなと思う。
最終的に寂しくなり村に戻るのも、周りが何だかんだ許してしまう
トムの性格なのかもしれない。
その戻り方もイタズラ好きの少年らしくて面白かった。
これだけでもだいぶ冒険であり、少年たちは高い壁を一つ超えたのだと思う。
大人になった時に思い返したら特別に輝いている良い思い出なんだろうな。
また、与えられたものの有り難さを忘れがちになってしまう
人間の欠点も所々で感じた。
トムが友人と海賊ごっこをしている間、
村の人たちは3人が溺れ死んだと勘違いして心底悲しんだが
実は生きていて村に戻ってくると一時的に喜んだ。
しかしすぐに日常に染まり、自分のプライドのために
相手を大事に出来なくなってしまった。
トムが海賊になる前に喧嘩してしまったトムとガールフレンドのベッキーだが
お互いに意地を張り合い続けていた。
そしておばさんも、帰ってきたトムがついた嘘の話を
信じて恥をかいた事で少年にきつく叱ってしまう。
子供に限らず大人でもよくある事で失ってから
もう少し大事にしておけばよかったと後悔するが
その後悔も取り払われたら、人はあっけなく忘れてしまう。
永遠に治すことが出来ない人間の悲しい性だなと思う。
当事者たちはその些細なことで揉めたり怒ったりしているのに
気がついていないのがなんとも物悲しかった。
児童文学は信仰の大切さや、人のあり方を見つめなおす機会を
与えてくれるように感じる。
もしも私が子供のころに読んでいたら感じ方は
また違っていたと思うが、一応一人の親となった今読むと
トムやハックがとても可愛らしく思えるし
純粋無垢な少年たちを見守るような感覚で楽しめた。
ちなみにハックルベリー・フィンがお気に入りなので
次回は彼の冒険を読もうかな。
