面白さ★★★★⭐︎
好き★★★★★
おすすめ★★★★⭐︎
毎月たね書房さんで開かれる「児童文学の古典を読む会」の
課題本だったこの作品。
実は初めて読んだ。
小学校の頃に担任の先生が読み聞かせで読んでくれた記憶が
ほんのりと残っているくらいで、魅力も何も分からなかったが
いざ向き合ってみると、なんだとても面白い。
今までどうして開かずにいたのかと悔やむほど
私の中で大好きな作品になった。
ヒロインは孤児院出身の女子大生。
顔も名前も知らないお金持ちの人から
学費を出してもらい、作家を目指す。
大学の面倒を見てくれたお金持ちというのが
タイトルにある、あしながおじさん。
主人公のジュディは学校に通っている間
勉強の様子や日常の出来事を手紙で書いて
あしながおじさんに送る。
返事は来ず、おじさんが手紙を読んでいるかも分からないが
大学の4年間手紙を書き続ける。
このジュディの手紙の内容がひたすら綴られているのだが
若い娘らしい、喜怒哀楽に満ちていて読んでいて一切飽きなかった。
親がおらず孤児院でも理不尽な目に遭い
そこから通わせてもらった高校でも
好奇の目で見られていた彼女は
信じられないくらい明るくて素直。
赤毛のアンといいジュディといい
どうして捻くれることもなく
ここまで良い子に真っ直ぐ育ったのだろうと
疑問だったが、一つは信仰があったおかげじゃないか
という考えを聞いてなるほどなと思った。
心の中に縋るものがあれば、とりあえずは
気持ちを前向きに持てるだろう。
海外は信仰心を大切にしている。
孤児でも家のある子でも
同じように信じて拠り所に出来る。
その拠り所がおそらく他の子達よりも強い存在だったのだろうと思う。
ほんの些細な事柄にも、喜び幸福を感じられて感謝できるのは
誰よりも強く素直な信仰心があったからなのかもしれない。
あれほどハイジで伝えられた信仰心のことを
すっかり忘れてしまっていた自分を少し反省し、
また「平等」という言葉を連想した。
ジュディが書く手紙は、恐らく孤児院の先生が期待しているような内容ではない。
勉強のこと以外に自身の感情や学生生活の事がふんだんに詰め込まれている。
時にはおじさんにお返事を期待してみたり、ウンでもなければスンでもない
相手に怒りの感情をぶつけたりした。
読んでいて、名前も顔も伏せて欲しいと頼むくらいだから
きっとプライドが高く一癖も二癖もある人なんだろうと想像していた私は、
ジュディがおじさんを怒らせないか心配した程だった。
結果はそんな心配は杞憂だったと、ホッとしたやら拍子抜けしたやらだった。
ユーモアがあって時々くすっと笑ってしまう手紙の内容がほとんどだが
それと同時に孤児というほの暗さが滲んでいる。
クリスマスプレゼントにあしながおじさんからたくさんの贈り物を
もらった際に、ジュディは他の同級生たちのように
自分にも家族がある空想ごっこをしていた。
これは父親から、これは母親から、これは叔母からという風に
数あるプレゼントを割り振ってその「つもり」になっていた。
ここの場面きっと私が子供の頃に読んでいたなら
きっとそのまま読み飛ばしてしまったと思う。
この空想がどれだけ切なく感じるのか分かるのは
大人になってからだと思う。
同級生たちも私もジュディがいう
「幸せに慣れすぎた女の子」で
プレゼントを貰えるのが普通、家族がみんな揃っているのが普通だった。
だからこの場面のしんどさに気づかなかっただろう。
でもそれが、本当に贅沢なくらい満たされている環境だった。
どんな不幸な事が起こっても、私は幸福だとはっきり気づいている。
この心づもりで生きていくつもりだと、およそ学生の女の子とは思えない
ジュディの考えは、30過ぎてやっと分かってきたくらいだ。
自分の置かれた環境に発狂したくなるくらい嘆き悲しみたくなる時もあるが
そんな時はジュディの手紙を思い出したい。