面白さ★★★⭐︎⭐︎
好き★★★⭐︎⭐︎
おすすめ★★★⭐︎⭐︎
主人公「セイタカさん」が小学校3年生の頃に
一人で見つけたなんとも惹きつけられる不思議な小山。
その小山は、古くから「鬼門山」と呼ばれていて
イタズラをしたり木を切ったり、荒らしたりすると
その人に祟りが起こると恐れられていた。
そんな話を聞かされても、セイタカさんは
怖い思いよりも魅力の方を大きく感じていて、
いつか自分のものにしようと考える。
恐怖よりも魅力が勝ったのは
祟りの話と同時に「こぼしさま」という
小さな人の話も一緒に聞いたから。
鬼門山に住んでいるという「こぼしさま」は
とても素早くて、目には見えないんだそう。
それでも昔はよく姿を見かけたようだが
あるとき、人間に小山を荒らされたり捕まったりしたので
それ以来人の前に現れなくなったという。
小山に住む可愛らしい小人と一人の青年が織りなす和風ファンタジー。
物語の時代は戦前から戦後。
鬼門山の祟りの話でも感じたが現代の人よりも
ずっと身近に、真面目に迷信的なものが信じられている。
また、一見怖そうに見えてもいざ付き合ってみると面倒見が良くて
優しいおじさんがいたり、今よりも人間関係が近くて
助け合っている感じが窺えた。
それと同時に、新しく自動車道路を造る工事が計画され
鬼門山が潰されてしまいそうになる。
「復興」という言葉が合っているか分からないが
貧しいながらにも、どうにかして前に進もうとしていた
古き良き日本だなあと感じながら読んだ。
そして「こぼしさま」
彼らは、日本の神話に出てくるスクナヒコノミコトという神様の子孫という設定。
日本神話や昔から語られる地元の迷信的な話にファンタジーの要素が
うまく織り交ぜられていて、じわじわと引き込まれる。
私が小学校3年生の時に、読書好きの友人からおすすめされた作品。
当時は少し退屈でイマイチだなという感想だった。
恐らく世界観が掴めなかったのだと思う。
「コロボックル」という単語は知っていたと思うが
スクナヒコノミコトやら鬼門やらという単語は
多分わかっていなくて、それらも作者が考え出したものだと思っていたんだろう。
だから、ちょっとついていけない・・・と感じたのかもしれない。
今になってみると、神話を元にした面白い作品だと思える。
神話にしても史実にしても、それを元にさらにこんな話があったら
面白いだろうなと思って書かれたのだろうか。
個人的に二次創作とか妄想で作られた世界なんか大好きで
散々そんな作品を拝んできたので歳をとった今が
私の読むタイミングでありウケるタイミングだったんだな。
私におすすめしてくれた友人は当時が読むタイミングだったんだろう。
子供時代を懐かしみながらページを捲ると驚いた。
絵を描くのが上手だったその友人の絵柄と挿絵の絵が
どことなく似ていたり、彼女の考え出した遊びの中に
「ヒコ」とか「ミコ」とか「ヒメ」という単語が
散らばっていた事を思い出した。
コロボックル物語の独特な世界観がウケた子供には、
大きな影響を与えていたんだなあと感慨深くなった。
小3の私は途中で読むのを辞めてしまったが、
なんとなく気まずくて「面白かったよ!」と伝えた。
でも一緒に遊んでいて、散りばめられた作品の単語が
分かっていなかったのだから、
きっと読んでいないことはバレていたんだろうな。
それにしても、お絵描きだったり遊びだったりにも影響してくると考えると
子供の頃に出会う作品って本当に大事なんだなと思った。
私自身も思い返せば好きな作品の「ごっこ」をしていたっけ。
そしてどれだけ良くても、何かが違っていただけで読み手に何にも伝わらないのだから
本と出会うタイミングや相性ってすごく大事なんだと改めて実感した。