どんなに酷暑でも、コーヒーだけはホットで飲みたい。
なんとなくホットの方が美味しく感じるし
コーヒー飲んでるなという感じになる。
コーヒーを含め、今でこそ世界中で親しまれる
嗜好品の数々が出回り始めた時は、どれも高価で貴重なものだった。
高級品なため、食品ではなく薬品として使われていたり
上流階級の人が自分の経済力を見せつけるための
道具だったこともあったのだとか。
今読み途中の「砂糖の世界史」(岩波ジュニア新書)中で
砂糖がどのように広まっていったのか書かれているが、
インドネシアが原産地とされている砂糖きびは
イスラム教徒によって西へ広められて欧州に知られると
今度はヨーロッパ人がさらに西へと運んだ。
そして、無限に市場があり大量に生産できると分かると
外国を植民地として、広大な畑を作った。
この広大な畑は、プランテーションといって、
砂糖きびなら砂糖きびだけを作る畑のこと。
元々あった土地の農業の習慣や民族の事情は全く無視して、
たった一つのものを作りだすため、その土地の全てを変えてしまう。
人口も風景も、社会のあり方も全てを変えて
成長を偏らせてしまうため、プランテーションが広まったところは
現在でも「開発途上国」となっている。
砂糖に限らず、お茶もコーヒーもタバコも
世界で親しまれる嗜好品のほとんどが
プランテーションで作られる。
そこで働く人はアフリカから狩り出された強制労働者。
今までも分かっているようで分かっていなかった。
ジュニア向けに分かりやすく説明された文章を読んで、
初めて現在の嗜好品が、どんな犠牲の上にあるのか理解した気がする。
人を人とも思わないような行為によって流された
血と汗と涙があったから、昔は高級品だったものでも
時間と共に庶民の手にも届き、誰でも楽しめるものになった。
それを知るとなんだかコーヒーを飲むものも、
甘いお菓子を食べるのもちょっと後ろめたくなる。
でも、ひどい歴史があったから、口にしないというのは
今更すぎるし違うと思う。
そして、影響力のある強い国が大量生産し
国内外に広めてくれたから、今世界中で親しまれている。
ヨーロッパと植民地となった国との掛け合わせが
今は多くの人の、ちょっとした贅沢を楽しませているんだと
しみじみ思う。
働き盛りの若者を奴隷として連れ去り、
社会の成長を妨げられたアフリカの国。
プランテーションによって、土地の在り方を変えられた
亜熱帯の地域の今の状態を見ると、
世界中に普及した嗜好品が出来上がるまでに行われた
大量生産の後遺症は本当に大きかったんだと思う。
だからと言って何が出来るわけではないけれど
自分が好きになった嗜好品について、
レシピでも歴史でもとことん調べて
「好き」を突き詰めていきたい。
コーヒーなら自分が一番美味しいと感じる淹れ方を
あーでもないこーでもないと試して、
時間を忘れるくらい夢中に楽しめたら、理想なんじゃないかと思う。
時には、広大な畑にまつわる歴史に想いを馳せながら
ホッと気分がほぐれるひとときを過ごしたい。
それにしても、欧州の人を鬼畜同然にしてしまい
アフリカや亜熱帯の国の成長を捻じ曲げてまで追い求めてしまう
「嗜好品」と言われるものの魅力にそら恐ろしくなる。