初読みの児童文学。
タイトルから想像していた内容は
可愛くいて可憐なお嬢様がお花がいっぱいの閉ざされたお庭で
お淑やかに過ごすというようなストーリー。
私の想像は半分当たっていたが後の半分は全く違った。
主人公は愛想がなくてひねくれ者で両親を亡くした傲慢な少女メアリ。
親戚だというイギリスのお屋敷に引き取られるのだけれど
そこが大変陰気臭くてどんよりとした雰囲気の家庭。
その閉ざされたお屋敷にこれまた閉ざされた庭があると知り
メアリはその庭を探すことに。
秘密の花園というのはメアリがその閉ざされた庭に想いを馳せてつけた名前。
10年間人が入っていない庭を、メアリと彼女の友人2人で再生させていくストーリー。
メアリの友人たちがまた個性的で面白い。
1人はディコンという男の子でメアリの世話を焼く女中の弟。
自然の中で育ちあらゆる動物と意思の疎通ができる。
秘密の花園の再生も彼の存在が無くしてはできなかったと思う。
もう1人はお屋敷の一人息子のコリン。
彼もメアリと同様捻くれていて傲慢で病弱な子供。
ひょんなことからメアリと出会い秘密の花園に興味を持つ。
三人の秘密の花園は順調に生き返り始めて、春の訪れとともに
花が咲き明るくなり始める。
庭の再生と同時にメアリとコリンにも変化が現れる。
メアリは引き取られてそれまでの生活から全く違った環境に置かれ
考え方が変わり、へそ曲がりの痩せた病気がちな子から明るく元気な女の子に。
コリンも庭に出るようになってから自分の病気は思い込みだったと気づき
元気なそして屋敷を継ぐ長男らしく変わった。
病は気からとよく言うけれどまさにその言葉を物語にしたような作品。
メアリは生まれ育ったインドでは母親から遠ざけされて部屋に篭って生活していた。
コリンも同じように父親と滅多に会わず、ずっと部屋に閉じこもり病人扱いされていた。
その2人が外気に触れて体を動かすようになると考え方が明るくなった。
人の健康は精神的にも体力的にも、薬やお金じゃなくて環境なんだと改めて考えた。
健康的なディコンとメアリやコリンの違いは家庭に愛情があるかないか。
メアリとコリンは裕福な家庭でたくさんの召使がいて世話を焼いてくれたけれど
誰からも大切にされなかった。
対してコリンの家庭は兄弟が多くて貧しかったけれど、母親が優しくて
愛情のある家だった。人が与え与えられる愛情が人の暮らす環境を良くするんだろうな。
それと同時にこれは究極の理想なんだとも思う。
メアリたちのような家とはいかないまでも、ある程度の生活の余裕も
生きていく上で大事な要素だと思う。
作者のバーネットは裕福な家庭に生まれ幼くして父親を亡くし
自身が生計を立てるために小説を書き始めたそうだが
富裕と貧困を両方味わって、お金だけでは心身の健康は維持できないと
伝えているのだと思った。
ある程度のものがお金で手に入れられた生活をしていた作者だからこそ
書けた作品なんだろうな。