太陽が出ている割に寒かった今日、
全く外出する気になれず、朝散歩がてら
コンビニに行き軽めの朝食とおやつを買い込んで
娘と戯れながら本を読んだ。
少し砂糖を多めに入れた紅茶を飲みながら
林真理子さんの「不機嫌な果実」を読み耽った。
彼女の女性らしく時折官能的な文章が好き。
以前に「コスメティック」を読んだのだけど
プライドがあり上品で、そこそこお育ちの良い
女性をとても魅力的に描いている。
こちらの作品は不倫をする女性の物語。
夫のことはそこまで嫌いじゃないけれど
少々の不満はある。
退屈な毎日にうんざりした主人公の水越麻也子は
昔付き合っていた野村という男性に連絡をする。
不倫の最初は、緊張や後ろめたさがあったが
話が進むにつれて大胆になっていくのが面白い。
悪事というのは最初の一歩のハードルがめちゃくちゃ高いんだよなあ。
野村と会っている時の高揚感や罪悪感
今まで体験したことのないことへの期待なんかが
鮮明に描かれていて作者が不倫の経験があるんじゃないかと
考えてしまった。
若い時から恋人や恋愛、友人関係で様々な駆け引きを
経験したであろう麻也子の価値観、プライド、願望などは
理解できること出来ないことが半々だったが、
きっとそこそこ美人で実家も貧乏じゃない、
スクールカーストの上位にいたような女性は
こんなことを考えてるのかもなあと想像は簡単にできた。
麻也子は最初、味気ない日常に彩りが欲しかっただけで
ちょっと火遊びをしたかっただけだった。
だから不倫相手もしっかり選んだ。
身元の分からない男性じゃなくて昔の恋人。
そして妻子持ちである野村。
年上で家庭でも職場でも立場のある彼なら
後腐れもなく別れたい時に別れられ
また秘密を漏らすこともないだろうと踏んでいた。
そんな時に幸か不幸か新しい出会いがある。
年下で独身、音楽評論家をしていて
ハンサムで実家がお金持ちという
魅力いっぱいの男性と出会い
麻也子も彼も互いにものすごく惹かれていく。
音楽評論家の彼は確かに「優良物件」だと映った。
麻也子には紳士的で優しい。
恋人の扱いも上手くて彼に気持ちが流れてしまうのは
なんとなく分かった。
でも少しずつ、危険な香りが漂ってくる。
麻也子だって心のどこかで分かっていたと思う。
分かっていても彼の魅力に負けてしまい
後に引けなくなってしまって
その危険な香りに気付かないふりをする。
都合が悪いことって人間誰しも気がつきたくないもの。
読みながらも、なんとなく雲行きが怪しいぞと思いながら
話はどんどんやり直せない展開になっていく。
どんな終わりになるんだろうと怖いもの見たさで
ほとんど一気読みに近かった。
ラストは恐怖と危うさが残った。
麻也子は三十三歳。
働いてはいるけれどそこまで忙しくしていない。
年齢も近く主婦という立場も似通っていて
作中麻也子が何かを決断するとき、感情的になる時は
応援したかったし彼女の友人として寄り添いたかった。
でも、正直ちょっと考えが幼いかも・・・と感じる時も
半分くらいあった。
麻也子の「自分ばかりが損をしているのでは」という考えも
幼さを感じたことの一つ。
自分だけが損だと感じる彼女の理屈は分かるけれど
個人的に彼女は割と恵まれていると思う。
稼いでくれる夫もあり、自分も給料をもらっていて
ある程度自由にできる。
姑との関係も、もしかしたら別の関係性があったかもしれないと
考えられないこともない。
夫の立場、義実家の立場、不倫相手の立場になってみた時
それぞれが損をしていると感じる時は平等にあったはず。
みんなそれぞれ我慢していることがあって
幸せそうに見えるあの人も実は苦労しているんだと
思えたなら麻也子も楽だったろうにと思う。
そして不倫や浮気は体力がいると何かで聞いたことがあったが
今までは、旦那さん以外ともう一度恋愛をするタフネスの事かと
思っていたが実は違った。
不倫に必要な体力とは、何が起こっても最後は自分が1人で責任を持つこと
不倫相手を責めずに自分だけが全て悪かったと本気で思えること
全ての後始末を自分1人で出来る手腕を持っているかどうか
失うものに比べて手に残るものは何もなくても
平気でいられる図太さなんだとぼんやり考えた。