最近は自分の好みそうな物がネットの広告で流れてきて
自分の趣味趣向がどこかにダダ漏れなのではないかと
少々怖くなるが、まんまとリンクからサイトに飛んでしまう。
そこでさらに自分の情報を与えてしまいどこからともなく
湧いてくる敗北感を味わう。
そんな、いわゆる「釣られた」感じで出会ったのが
「虫かぶり姫」というコミック。
読書好きの令嬢が、王太子に惚れられて
婚約するというところからストーリーが始まる。
「虫かぶり姫」というのは本が好きすぎるあまり付けられた
ヒロイン、エリアーナ嬢のあだ名。
一言で文字にしてしまうとどこにでもありそうな
あっさりしたものになってしまうけれど
本以外にあまり興味のないご令嬢の気を、
王太子という立場の人がなんとか惹こうとしたり
間接的に守ったりする場面は少女漫画的なときめきがある。
冴えない地味な女の子に、一軍の陽キャ男子が恋に落ちる
という構図が個人的にはたまらなく好きなので、
こちらの作品はストライクだった。
相手が王太子という立場と顔の良さから、
エリアーナにはたくさんのライバルがいて
さまざまな謀略に巻き込まれていくのだけれど
読書で得た知識が無意識に発動して無意識に反撃しているなんてことも
あってとても面白い。
儚げで誰かから常に守られていないと生きていられない。
というのはもう、昔のヒロインなのかもしれない。
エリアーナは儚げな要素もあり、一見か弱く見えるヒロインだけれど
知識があってちゃんと自立している。
そんなギャップがウケたんだろう。
また、最初は王太子の婚約者という立場が
仮のものだと勘違いしていたり
自覚がなかったりしたけれど
自分の気持ちや立場を理解し出したら
少しずつ王太子妃として成長する姿も見られる。
その成長していく過程も見守っている側からしたら、
誰でも手が届くと思われた、野原の花が一気に
高嶺の花に駆け上って行くような感じで
嬉しさ半分寂しさ半分な複雑な感情になる。
自分が密かに応援していた無名の推しが何かをきっかけに
急に有名になって寂しくなる気持ちってこんな感じなのかな。
先に書いたようにヒロインにはライバルとなる他の令嬢や
なんとか陥れようとする輩がいるのだけど
本人も知らないうちに彼らに反撃を喰らわせている。
反撃にあった人たちはもれなく撃沈していくのだが
その様子を見ていた第三者には魅力的に映るようで
いつの間にか信者がいたりする。
その天然人たらし的な性格も物語にコメディ感を与えている。
私が特に好きなのはこうしたヒロインの賢さが
作品のあちこちに見られるところ。
広く浅くという言葉はよく聞くけれど
虫かぶり姫の知識は広く深い。
その知識で反撃もすれば、戦争を未然に防いでいたりする。
そしてその知識や功績を自慢することなく
だからと言ってめちゃくちゃ謙虚というでもない
淡々とした性格が好き。
自分の魅力にいまいち気づいていない女の子も
私の好物なんだろうとこのブログを綴りながら思った。
本を深く読み込んで正しく理解して
適度にアウトプットしている。
彼女の本の読み方も手本にしたい。
深く読んでいるからこそ、思考も深く複雑になり
最初は仮の婚約だと勘違いも起きたのかもしれないが。
そしてコミック最大の魅力の絵柄も
細かく書き込まれていて綺麗。
一つ一つの線が細かく描かれている絵が好きなので
表紙を眺めているだけでもうっとり出来る。
表紙なんかのカラーも繊細で淡い感じ。
その色使いが、ヒロインの印象をイメージしているのかなと
勝手に想像している。
虫かぶり姫は読んでいて得られるトキメキも大きいけれど
個人的には読書のモチベーションを上げるために
繰り返し読んでいることが多い。
エリアーナ嬢とその兄が、美術品が偽物だと見破った場面があるが
究極の理想はその場面の2人の姿なのかもしれない。
本で得た知識を正しく使っていくのは
本を読む人たちにとっては甲斐があることなんだと思う。
これが結構難しいことなんだけれど。