面白さ★★★⭐︎⭐︎
好き★★★★⭐︎
おすすめ★★★★⭐︎
インドで何不自由なく裕福な生活をしていた
セーラ・クルー。
大人びた考え方や表情に合わせて空想好きという
少し変わった子供だと見られがちだけれど
温厚で優しい性格。預けられた寄宿学校では
年下の生徒や同級生から慕われている。
それと同時に実家の裕福さや見た目の良さ賢すぎること、
富裕層独特の余裕などから妬まれることもあり
寄宿先の先生ミンチン女史や同級生のラヴィニアからは
激しい嫉妬の感情をぶつけられる。
特に父親のクルー大尉が亡くなってからは
文無しになったセーラに対して
手酷いいじめを毎日繰り返す。
最初からミンチン先生やラヴィニアは好かなかったけれど
セーラに身寄りがなくなってからの言動は読んでいても
腹立たしいこと極まりなかった。
そんな悲惨な状況にもセーラは屈することがなく
最後まで自分の誇りを失わなかった。
優しいだけじゃなく自分の主張はしっかりする。
理不尽な人に対してははっきり物申すことが出来る。
父親が亡くなってしまい悲しくても、下女のような扱いをされても
離れて行かなかった友人たちや持ち前の空想力に支えられて
乗り越えていく姿にセーラの精神の強さを思い知った。
本当に強い人というのはどんな状況になっても
孤立無援になってしまうことがない。
いつでも自分の正義が心の中にあり
どこまで貧しくなっても人に与え続けられる
セーラの周りにも常に人がいた。
最後は思わぬ救いが現れて晴れてお嬢様に返り咲く。
本当の裕福さと本当の貧困を両方味わった彼女は
最下層の市民の気持ちにも理解があり寄り添える
まさに小さな公女なんだろう。
父親に散々甘やかされインドではみんなが従ってくれる。
そんな幼少期を過ごしてきて、どこでセーラの正義感や
余裕が育ったのだろうと考えたことがあったが
おそらく元々素質的なものを持って生まれたんだろうと思う。
同じようにみんなが付き従う環境で育った「秘密の花園」の
メアリは意地悪くわがままで自己中心的な子供だった。
普通ならメアリのようになりそうなのを
セーラの方は実家の経済力を鼻にかけることもなく
わがままなんて言わない子に育っていた。
父親から愛されていたという違いはあるが
愛情だけでセーラのような淑女は出来上がらないだろう。
生まれながらのプリンセスでありどんな状況になっても
必ず豊かになれる自分の定めのようなものを
無意識に分かっていたからずっと余裕でいられたのかな
なんて考えた。
本当の富裕層は天性の金持ちなのだなと
ちょっと切なくなった瞬間だった。
父親が亡くなると知る直前にラヴィニアから
「乞食になってもその空想やつもりごっこが続けられるか?」
と皮肉を言われた時、難しいだろうが出来ると思う。と答えていた。
そんな状況になったならしょっちゅう空想や
何かのつもりでいなくてはならないだろうと、考えてから答えている。
セーラの誕生日パーティの最中、父親からのプレゼントを
みんなで見ている時の会話でありその裏ではクルー大尉の
訃報が伝えられていた場面。
これからの寂しく暗い生活がより際立つ描き方になっている。
これが伏線というものなんだろうか・・・?
何かで衰退の直前が一番輝かしい時だと読んだことがあるが
その言葉を小説にしたようだと思った。
実際に文無しになってからも
空想やつもりごっこをしていたが
ふと1人になった時虚しさを感じている箇所があった。
彼女の考えを身をもって検証できたのではないだろうか
セーラのユーモアや筋の通った性格に魅了され
最後はしっかりスカッと出来るストーリーが
この作品の魅力なんだろう。
辛い時にどうやって乗り切るのか考えられる
心の持ちようは私たちにも必要な要素なのだろうし
自分で自分の機嫌を取れる、気持ちを奮い立たせることが
できるというのは金銭に関係なく豊かな人なのだろう。
児童文学だが大人にも読んでほしい。
いつの日か娘と一緒に読み
感想の共有会をしたい。