ディズニー作品でも有名なアリス。
私も入り口はディズニー作品だった。
そのため、初めてジョン・テニエルの挿絵を見た時には
「なんか怖いし、こんなのアリスじゃない!」
と受け入れられず苦手だった。
でも、歳を取るとともにこれがアリスだなと思えるように。
大人になると味覚が変わるように、感覚も変わっていくのだろうか。
物語自体もとても好き。
子供の頃はただ単にアリスがする不思議の国での冒険が楽しかった。
でも、大人になって読み返すと
少し不気味でそれでもなんか知りたくなっちゃう
なんか気になっちゃうというウサギ穴の先の世界は
子供の視点で見た現実世界はこんな感じなんだと
アリスが自分の目を通して教えてくれているのかなと考えたり、
楽しみ方の幅が増えた。
改めてじっくり読んでみると、細かな設定や
脇役たちを再確認できる。
子供を抱いた侯爵婦人やウミガメモドキなんかは
ディズニー作品では見かけなかった。
また、イカれ帽子屋の時計は二日遅れていて
ハートの女王様からの罰なんだという設定も作品を読んで初めて知ったこと。
だから、ディズニーアニメの方では滅茶苦茶なやり方で
時計を直そうとしているんだと繋がった。
子供の頃は、時計を料理しているのかと思っていた。
子供はもちろん大人になった今でも
充分に魅了される作品。
見るもの全てが真新しくて日々が冒険で
ちょっと怖いのは、まさに子供が毎日感じている事なのではと思う。
不思議の国で出会う人達は、親切とは言えないようなキャラクターばかり。
気難しくて、アリスに対してなんやかやと言ってくるのは
まさに大人が子供に口うるさく言う姿と被る。
作者の生い立ちを少し調べてみるのも楽しみの一つだと思う。
作者のルイス・キャロルは先祖の大半が
軍人か聖職者という家系。
祖父が陸軍大尉で、父親は教師を経て教区牧師になった人。
父子揃って数学に対して天賦の才があったよう。
ルイス・キャロルが数学者だったのは知っていたが
お父さんまでもは知らなかった。
才能は遺伝するんだろうか。
父親の影響を受けて自身も敬虔なキリスト教徒だったが、
後に儀礼主義の英国教会の指針に内心の対立を感じるようになり
生涯に渡って宗教的なジレンマを抱え続けた。
この経験が、なんでもルールに縛り付けて
短気を起こしては首を刎ねてしまうハートの女王を
生み出したのかななんて思う。
また、11人の兄弟たちと共に育ち
個性的で騒がしい不思議の国の住民の元に
なったりしているのかとも考えるとなんだか楽しくなる。
そしてびっくりする趣味。
写真が趣味で夥しいほどの少女の写真を撮った。
その中にアリスのモデルとなる、アリス・リデルという女の子の写真もあり
リデル家の娘たちの写真を撮り続けたらしい。
リデル夫人から写真を撮るのを辞めるように言われても
辞めなかったのだとか。
この事実を知った時自分の娘の写真を撮られ続けたら
だいぶ薄気味悪いよなあと夫人に同情した。
また、この作品はリデル家の娘たちに向けて
即興で語られた物語であり、アリス・リデルは彼のお気に入りだったために
アリスという名前が主人公に使われたのだそう。
作品冒頭の詩はこの即興で語った情景を鮮やかに思い起こさせる。
ざっとネットと見てみると、とても良い家に産まれていて
裕福だったんだろうということが伺える。
個人的に、作者の生活や体験が作品に反映されやすいと考えているため、
アリス自身もしっかり教育を受けている設定になっている。
物語の最後はアリスがアフタヌーンティーに
向かっている様子で終わっていて、余裕がある家庭の子なんだろうと想像できる。
こんな情報を少しでも頭に入れておくとより一層物語が楽しめる。
この経験が作品のこんなところに繋がっているのかなと
あれこれ想像するのも読書の醍醐味なのかなと思う。